2015年10月20日火曜日

2050年 ガソリン車消滅でトヨタ自動車がピンチの理由

トヨタ自動車は10月14日、持続可能性の取り組みに関する大胆な新計画を発表した。2050年までに、同社が製造する新車が排出する二酸化炭素(CO2)を、2010年と比較して90パーセント削減する計画だ。
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151019-00010000-biz_wired-nb
2050年までにトヨタ自動車はガソリンエンジン車を販売しなくなるらしい。ちょうど今から35年後の未来。いわゆる地球温暖化問題に対応するため、「脱ガソリンエンジン」で二酸化炭素排出量を抑えようということ。

ただし目標は2010年比で90%削減ですから、裏を返せば10%はCO2を排出する。何故ならハイブリッドカーやPHEVも含まれるから。だから厳密にはガソリンエンジンそのものは消滅しないっぽい。あくまでガソリンエンジンは補助的に使う感じ。

要は、水素で走行する燃料電池車(FCV)や電気自動車、プラグインハイブリッド車を主流にしていく。ただこれについて賞賛する評論家もいますが、もしEVやPHEVが主流になると、トヨタ自動車そのものが危うくなるのではないかと思います。



電気自動車を製造するのはカンタン

何故なら、電気自動車を製造するのはカンタン。

エンジンは排気ガスを排出するので複雑な構造になりがちですが、電気自動車はモーターのみで走る。だから変速機も不要。タイヤにモーターが組み込まれてることも多く、電気自動車を組み立てることもカンタン。ものすごく大雑把に言えば、EVは車体にモーターをポンと載せるだけ。

だから現在でさえ、電気自動車市場に参入するハードルが低いとも言えます。例えば「世界で売れ筋の電気自動車」の車種を見てみると、アメリカだとテスラが圧倒的に人気。中国だと国産企業の「BYD」がトップ。唯一世界で健闘してるのは、三菱のアウトランダーPHEVぐらいで、日産・リーフもトヨタ・プリウスPHVも存在感はほとんどない。

35年後の未来は3Dプリンターも相当進化してるでしょうから、厳しい安全基準に耐えうる強固な車体を製造することも可能。電気自動車はモーターさえ強力で、またバッテリーさえ大容量であれば、自動車そのものに「性能差」も生まれづらくなる。ということは現在の格安スマートフォンの台頭と同様に、自動車市場は色んな企業が参入してくる時代になるかも知れない。

燃料電池車についても、トヨタ自動車はこれらの特許は公開中。もし本格的にFCVが普及した時に、果たしてどこまで技術的な優位を維持し続けられるのかも疑問。既にPHEVに関してはベンツやBMWだけではなく絶賛炎上中のフォルクスワーゲンも最先端を走ってる。

果たして、「世界」のトヨタ自動車に勝機はあるのか?35年後の未来でも「世界」のトヨタ自動車であり続けられるのか?

電気や水素の生成にも二酸化炭素は排出する

そもそも電気自動車や燃料電池車は環境に優れてると言いますが、電気や水素を作るにも二酸化炭素は排出する。

水素は水を電気分解して生成するわけですが、そこでは大量の電気が必要。その電気を作るには、日本だけではなく世界的にも火力発電が主流。火力は石油や天然ガスといった化石燃料を燃やすことで発電してる。言うまでもなく、そこでは二酸化炭素が排出されています。

じゃあ2050年になって火力発電所が無くなるのか?と考えると、さすがにそれは考えづらい。日本では最近原子力発電所が再稼働し始めて賛否両論ありますが、それでも2050年に原子力発電がメインとして重宝され稼働率トップに躍り出ることは更に考えづらい。それこそ原子力の環境上・安全上のリスクを考えたら「100%ない」とまで断言したっていい。

もちろん太陽光や風力発電、小水力発電は二酸化炭素を同じくほとんど排出しません。自然エネルギーは発電を溜めておけないデメリットがあると言われますが、少なくとも水素にしておけば電気エネルギーを溜めることは事実上可能

だから、もしトヨタ自動車が「環境」を本気でアピールするのであれば、そういった分野にも注力してほしいところ。そうでなければ誰も「トヨタの本気度」を信用しない気がします。

まとめ評価

トヨタ自動車が理想を掲げるのは自由ですが、この実現はなかなか困難だろうなーと思います。EVやFCVの普及(ガソリンエンジンからの脱却)と市場での優位性を保つことは二律背反的。ガソリンエンジンを使用しているからこそ、現在の大企業としての優位性を保ててるわけですから、誰でも参入できる時代を招く「脱ガソリンエンジン化」はまさに両刃の剣。

そもそも自動車部品やパーツの原料には、石油製品が多く使われているのが現状。脱石油・脱化石燃料を突き詰めていくと、それこそ自動車そのものを作れるのか?という疑問も。「自動車ライフサイクル全体のCO2ゼロ」も掲げているようですが、結局2050年でも原油に頼った生活を送っているとしたら別のアプローチも考えておくべきかも知れません。

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